景品表示法とは

景品表示法は、不当な表示や過大な景品類の提供による顧客の誘引を防止するため、 一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為を禁止するなどにより、 消費者の利益を保護することを目的とする法律です。景品表示法の概要について、以下、説明します。
[ 景品表示法関係法令集 Web版 ]

景品表示法の概念図

景品類の制限及び禁止(第4条)
不当表示の禁止(第5条))
>> 措置命令(第7条第1項)
不実証広告規制(第7条第2項)
課徴金(第3節)
確約手続き(第6節)
 
景品類の提供及び表示の管理上の措置
(第4節)
>> 勧告・公表(第24条)
 
協定又は規約(第36条)= 公正競争規約    [ 公正競争規約とは | 公正競争規約一覧 ]

法律が制定された背景

  • 昭和35年、東京都衛生局に「牛肉の缶詰にハエが入っていた」という届出がありました。 調べたところ、中身の肉はクジラ肉でした。
  • 当時、「牛肉の大和煮」や「コンビーフ」の中身を調べてみると牛肉っぽく味付けした馬肉やクジラ肉であるという事件も頻発していました。
    甘味料に着色して香料を加えて「オレンジジュース」として売られていたり、 「駅から徒歩10分」という不動産の広告を見て案内所に行ったら自動車で1時間の山奥に連れていかれたりという事件もありました。
  • また、当時は日本経済が飛躍的に発展を遂げた時期であり、景品キャンペーンも派手でした。
    宝くじの最高当選額が100万円であった時代に50円のチューインガムを買うと1000万円当たるというような企画が散見されました。
  • こうした欺まん(人をあざむくこと、だますこと)的な広告や過大な景品提供による顧客誘引は、 独占禁止法で禁止されていましたが、短期間で波及、昂進(次第に程度が高まること)する行為を簡易迅速に規制するための法律として、 景品表示法(独占禁止法の特例法)が昭和37年に制定されました。
    景品表示法は平成21年に、公正取引委員会から消費者庁に移管されました。

競争法から消費者保護法へ

  • 法律が公正取引委員会から消費者庁に移管された際に、目的が「独占禁止法の特例を定めることにより、 公正な競争を確保し、もって一般消費者の利益を保護することを目的とする」から 「一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為を制限及び禁止することにより、 一般消費者の利益を保護することを目的とする」と変更されました。
  • これにより、景品表示法のの違法性は、『公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示または景品提供 (競争法=独占禁止法の特例法)』から 『一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示または景品提供(消費者保護法)』に変わりました。

景品表示法の規制の概要

表示規制(第5条)

表示とは

表示とは、
  1. 顧客を誘引するための手段として、
  2. 事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う
  3. 広告その他の表示
であって、内閣総理大臣が指定するものをいう、と定義されています。その内容は以下のとおりです。
  • 商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付したものによる広告その他の表示
  • 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似するものによる広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。)
  • ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオン・サイン、アドバルーン、その他これらに類似するものによる広告及び陳列物又は実演による広告
  • 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告
  • 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。)

以下のとおり、不当表示については、優良誤認、有利誤認、内閣総理大臣が指定する誤認されるおそれある表示の別に規制されています。

優良誤認表示(5条1号)

優良誤認表示とは、「実際のものよりも『著しく優良』であると示す表示又は事実に相違して他の事業者が供給するものよりも『著しく優良』であると示す表示」をいいます。
    例えば...
  1. 食肉の品質・ブランドなどの偽装表示
  2. 予備校の合格実績の水増し表示
  3. ダイエット食品の効果の虚偽表示
  4. 根拠のないナンバーワン表示

有利誤認表示(5条2号)

有利誤認表示とは、「実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示」をいいます。
    例えば...
  1. 「平日2000円のところ今だけ500円」と表示 → 実は平日500円だった。
  2. 「水漏れ修理500円(税込)~」と表示していたが、実際には、作業の追加料金と併せて数万円請求していた。
  3. 「商品の購入者にプレゼント」と称していたが、商品の販売価格には「プレゼント」と称して提供する商品の価格が含まれていた。

内閣総理大臣が指定する誤認されるおそれある表示(5条3号)

  1. 無果汁の清涼飲料水等についての表示
  2. 商品の原産国に関する不当な表示
  3. 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
  4. 不動産のおとり広告に関する表示
  5. おとり広告に関する表示
  6. 有料老人ホームに関する表示
  7. 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(いわゆるステルスマーケティング表示)

ワンポイント・アドバイス

過去の違反事例(措置命令など)については、 「措置命令・課徴金納付命令・確約データベース」 から検索が可能です。

景品規制(第4条)

景品類とは・・・

景品類とは、
  1. 顧客を誘引するための手段として、
  2. 事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の取引(不動産に関する取引を含む。)に付随して
  3. 取引の相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益
であって、内閣総理大臣が指定するものをいうと定義されています。その内容は以下のとおりです。
  • 物品及び土地、建物その他の工作物
  • 金銭、金券、預金証書、当せん金付証票及び公社債、株券、商品券その他の有価証券
  • きょう応(映画、演劇、スポーツ、旅行その他の催物等への招待又は優待を含む。)
  • 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告
  • 便益、労務その他の役務
ただし、正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益 及び正常な商慣習に照らしてその取引に係る商品又は役務に付属すると認められる経済上の利益は含まないとされています。

以下のとおり、懸賞、総付、特定業種の別に、告示により提供できる景品類の額の上限等が制限されています。

懸賞

「懸賞」とは、くじその他偶然性を利用して定める方法、特定の行為の優劣又は正誤によって定める方法によって、 景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいいます。
提供可能な額
一般懸賞:取引価額の20倍(上限10万円)、懸賞に係る売上げ予定総額の2%
共同懸賞(商店街などが実施):取引価額にかかわらず30万円、懸賞に係る売上げ予定総額の3%

総付(懸賞によらない場合)

一般消費者に対して「懸賞」によらないで提供する景品類は、一般に「総付(そうづけ)景品」と呼ばれており、 例えば、商品又は役務の購入者や来店者に対してもれなく提供する景品類などがこれに当たります。 また、商品若しくは役務の購入の申込み順又は来店の先着順により提供する景品類も、原則として総付景品に該当します。
提供可能な額
取引価額1000円未満の場合:200円
取引価額1000円以上の場合:取引価額の10分の2

特定業種の規制

新聞業、出版小売業、不動産業、医療用医薬品等の4業種について、業種別に告示が出ています。

ワンポイント・アドバイス

景品類の提供については、企画に応じて、取引に付随するとは何か、過去に取引した人に提供すると規制を受けるのか、 無料で会員登録した人に提供するとどうか、ホームページで景品提供を行うと規制対象か、セット販売と景品提供の違いは何かなどといった、 様々な考慮が必要です。 そうした点については、消費者庁のウェブ・ページの「よくある質問コーナー(景品表示法関係) >景品に関するQ&A >」が充実しています。

景品表示法の執行(違反行為の調査(第5節)・措置(第2節))

調査と措置を行うのは、消費者庁、都道府県、都道府県から委任された市です。 また、調査については、さらに、消費者庁から委任を受けた公正取引委員会が行う場合があります。
  • 違反被疑事件の調査:
    違反被疑事件を調査するための権限として「報告命令、提出命令、立入検査、質問調査」が定められています。
  • 措置命令(例:不当表示の場合):
    措置命令においては、一般に、次の措置が命じられます。
    1. 違反行為の差止め。
    2. 消費者に誤認される表示で景品表示法に違反するものである旨を消費者に周知徹底すること(新聞広告等による公示)。 その方法については、あらかじめ消費者庁長官(または都道府県知事)の承認を受けなければならない。
    3. 違反行為の再発防止策を講じて役員および従業員に周知徹底すること。
    4. 今後同様の違反行為を行わないこと(繰り返し行った場合は、措置命令違反として刑事罰の対象)。
    5. 命令に基づいてとった措置等を速やかに消費者庁長官(または都道府県知事)に報告すること。

不実証広告規制(第7条第2項)

景品表示法第7条第2項は、消費者庁長官及び都道府県知事が、 同法第5条第1号(優良誤認)に該当する表示か否かを判断するため必要があると認めるときは、 当該表示をした事業者に対し、期間(文書により当該資料の提出を求めた日から原則とし15日以内)を定めて、 当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めた場合において、 当該事業者が当該資料を提出しないとき、 又は提出された資料が当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められないときには、 当該表示は措置命令との関係では同号に該当する不当表示とみなされるということを定めたものです。

課徴金(第3節)

事業者が優良・有利誤認表示をする行為をしたとき、 消費者庁長官は、その行為をした事業者に対し、 課徴金対象行為に係る商品又は役務の売上額の3%(10年以内に違反を繰り返したときは4.5%) の課徴金の納付を命じなければならないとされています。

確約手続(第6節)

景品表示法第4条の規定による制限・禁止又は景品表示法第5条の規定に違反する 疑いのある行為について、 事業者の自主的な取組により解決するための確約手続が導入されました。 確約手続は、措置命令又は課徴金納付命令と比べ、 一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為をより早期に是正し、 消費者庁と事業者が協調的に問題解決を行う領域を拡大し、景品表示法の効率的かつ効果的な執行に資するものとされています。
具体的な手続きは以下のとおりです。
  • 内閣総理大臣(消費者庁長官)は、第4条の規定による制限若しくは禁止又は第5条の規定に違反する行為があると疑うに足りる事実がある場合に、 その疑いの理由となった行為について、一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保する上で必要があると認めるときは、 その行為の概要や関連法令の条項、是正措置計画の申請が可能である旨を通知することができます。
  • ただし、すでに措置命令などが行われた後はこの通知は行われません。
  • 通知を受けた者は、違反行為およびその影響を是正するための「是正措置計画」を策定し、60日以内に提出して認定を申請することができます。 この計画には具体的な是正措置の内容や実施期限などを記載しなければならないとされています。
  • 内閣総理大臣は、申請された是正措置が、疑いの理由となった行為による影響を是正するために十分なものであること、影響是正措置が確実に実施されると見込まれるものであると認めた場合に限り認定します。 当該「是正措置計画」の認定については、消費者庁は違反を認定したものではないとしています。

景品類の提供及び表示の管理上の措置(第4節)

「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成26年11月14日内閣府告示)」のより、具体的に、不当表示、過大な景品類の提供を未然に防止するために必要な措置を講じることを求めるものです。 必要な措置とは、例えば、景品類の提供について、それが違法とならないかどうかを判断する上で必要な事項を確認することや、商品又は 役務の提供について実際のもの又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良又は有利で あると示す表示等に当たらないかどうかを確認することのほか、確認した事項を適正に管理するための措置を講じることとされています。 指針には、次の点が挙げられています。
  • 景品表示法の考え方の周知・啓発
  • 法令遵守の方針等の明確化
  • 表示等に関する情報の確認
  • 表示等に関する情報の共有
  • 表示等を管理するための担当者等を定めること
  • 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置をとること
  • 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
消費者庁長官は、(上記の)必要な措置を講じることに関して適切かつ有効な実施を図るために必要があると認めるときには、 事業者に対して指導及び助言を行うほか(景品表示法第27条)、 当該事業者が正当な理由がなく必要な措置を講じていないと認めるときには、 当該事業者に対して必要な措置を講ずべき旨を勧告します(同法第28条第1項)。 また、当該事業者が勧告に従わないときは、その旨を公表します(同法第28条第2項)。

ワンポイント・アドバイス

当連合会では、消費者庁の後援を得て、CBT(Computer Based Testing)により、景品表示法務検定を実施しています。 この試験の合格者を「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成26年11月14日内閣府告示)」に規定された 「表示等管理担当者」として、 広告企画や法務等の担当者に配置・活用し、景品表示法違反行為の未然防止を徹底していただくことを期待するものです。
[ 消費者庁後援 景品表示法務検定 ]この制度を是非、ご活用ください。